漆器の代表的な産地のひとつ、石川県加賀市。
その山中に、30〜50年間完成を待ち続けた漆器があります。
それは・・・
当時の漆器商が木製品の加工技術がなくなる前に
職人につくらせ、蔵に眠っていたものです。
完成の日を待つ器
漆器は完成に至るまで、大変多くの工程があります。
大きく分類しただけで、木地どり・粗挽き・乾燥・木地加工・下地・下塗り・中塗り・上塗り・蒔絵とあり、各工程に精通した職人が技をふるいます。
中でも、木地を輪花形に削ったり、亀甲形の面彫の意匠を施す「かきもの師」は、今では数少なくなってしまいました。
そのため、蔵に眠っていたその器は、形を削りだした木地のままであったり、下地塗りのままであったりと、素材の段階で止まったまま完成に至っていないものでした。
ひとつの器に手間暇かけて
この蔵で眠っていた器は、途中工程まで、丁寧かつ繊細であり、今では再現不可能なほど手間暇をかけて仕上げられています。
「下地塗り」という工程1つをとっても、幾重もの工程を経て作られています。
現代の職人へつなぐ
時代を超え、他にはない存在感を見せるその素材を使いながら、今の暮らしに合うようにモダンな器として完成させる。高度な伝統技法を受け継ぎながら、現代の暮らしを豊かにしてくれる新しい器として世に送り出す。
この2つの思いを実現すべく、伝統工芸士・亀田泉氏に塗りの仕上げを依頼しました。
今回は、
お使いいただく歳月とともに下地の美しさが次第にあらわれる「黒透漆」や「溜漆」、漆ならではの色艶を持った「朱漆」を施し、存在感がありながら、現代の食卓に馴染むように艶を抑えた五分艶で仕上げています。
また、亀甲仕上げの生地は、欅の木目を感じる目はじき塗です。
時代を超えた逸品
長い年月を経て、職人の手業をつないで完成された漆器は、職人たちの思いの結晶・絆と言えるでしょう。
伝統的な手法を伝えながら、今の暮らしに新しさを感じさせる風合に出来上がりました。
蔵に残された木地でしかつくることのできない、数量限定の新作の漆器。
重厚な存在感を放ち、格別な時間をもたらす逸品です。