

古くから伝わる日本の伝統文様には、良きことを願う吉祥文様が数多くあります。それらは図案化され、優れた文様、図案としていまなお、和の事物には欠かせないものです。
暮らしに関わり深く結びついているうつわにももちろん様々な吉祥文様が描かれています。秘められた思いやストーリーに思いを馳せると愛着もひとしお。代表的な縁起の文様とその由来をご紹介します。
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七宝
古くは四方襷とも呼ばれ、輪が交差しつつ四方につながってゆく連続模様。「四方(しほう)」の読みが仏教で世界中の財宝を表す「七宝(しっぽう)」へ変化したと言われています。豊かさを願うとともに円満を想起する輪が連鎖してゆく様子から、子孫繁栄の意味も込められる吉祥文様です。
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市松
江戸時代に歌舞伎役者の袴に用いられ、大人気を博した伝統柄。文様としては、非常に古くからみられるもので、石畳文様、霰文様とも呼ばれます。鮮やかなコントラストは華やかなイメージで、慶事の席を引き立ててくれます。
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かぶら
その昔、頭のことを「かぶ」、「かしら」と呼んでおり、頭が身体の一番上にあることと、人の上に立つ人のことを「かしら」と呼ぶことから、武士の間で縁起のよい食べ物として広まりました。現代でも、評判が良くなることを「株が上がる」ということから、縁起を担ぐ食べ物として親しまれています。
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唐草
からくさ文様とは、エジプト・ギリシャで生まれた植物をモチーフにした曲線文様や中国起源の文様などがシルクロードを通じて互いに影響しあってできた文様と考えられています。日本へは、古墳時代に中国より伝来したことが始まりとされています。どこまでも伸びやかに広がってゆく様子から、繁栄や長寿を象徴する縁起の良い文様とされています。
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松竹梅
冬なお緑を保つ松、常緑でまっすぐに伸びる竹、春を前に真っ先に花開く梅、と四季のなかで力強く生きるその姿に思いを込めたものです。
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鶴亀
鶴と亀は長寿の象徴として知られ、加えて鶴は夫婦仲睦まじい様子から夫婦円満の象徴ともされています。
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十草
とくさとは、天に向かってまっすぐ伸びる植物のひとつ。そのすっきりとした姿や、凛とした佇まいをうつわに写した縞模様を“とくさ文様”と呼びます。日本では古くから親しまれてきた文様で、まっすぐに伸びる様子や、とくさで金を磨くと光沢が増すと言われることから、成長や繁栄を表す縁起の良い文様とされています。
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青海波
青海波の発祥は古代ペルシャとされています。飛鳥時代に、シルクロードを経て日本に伝わってきました。無限に広がる波の文様に未来永劫へと続く幸せへの願いと、人々の平安な暮らしへの願いが込められた縁起の良い柄です。
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小槌
打てば何でも望むものが出てくるとされる伝説上の槌。日本の説話や昔話に登場している宝物のひとつです。大黒天の持ち物であるともいわれ、富貴を象徴します。
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分銅
秤で物の目方をはかるおもりのことです。金や銀を分銅の形に鋳造し貯えたことから、財産や富の象徴とされます。
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巻物
ありがたいお経が書かれた巻物。巻物や書物は知恵の宝庫とされ、転じて知恵を授かるという意味があります。
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宝鍵
鍵のことで、蔵の鍵を象ったものです。蔵をたくさん持てるようにとの願いが込められた富を象徴しています。
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丁子
香辛料のクローブのことです。平安時代に渡来し、その芳香と貴重さから珍重されました。現在は縁起の良い文様として、価値があるものを象徴します。