第11回 杉本節子さんに聞く「京町家 秋の光降る京町家」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、快適に過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第10回 京町家 秋の光降る京町家

紅葉の色づきを待つ間にも、秋の歩みは進みます。替え終わったばかりの冬建具を通り、白く色づいた穏やかな斜光が部屋の隅々を照らします。陽を受けた畳が程よく温もりを帯び、心地よい空気がお部屋に満ちるおだやかな菊日和、秋の光降る杉本家を訪れました。

格子の間

京町家の特徴としてまず挙げられることの多い格子。建物に奥ゆかしさを添える町家の見どころのひとつですが、本来は採光や風通しのためには欠かせない建具です。おもてからは中を伺うことのできないほどの狭い間隔に見える細格子も、屋内に充分な光を導き、屋外の様子は手に取るように分かります。

虫籠窓と出格子

出格子と二階の虫籠窓。いかにも京町家らしい佇まいの向こうは洋間になっています。昭和の初期、八代目の結婚を機に天井を高く取りなおし、床をコルク材へ変えるなどの改装が施されました。一階の出格子の部分に造り付けられたソファ、虫籠窓を高窓として採光の役割を持たせるなど、町家の特徴が各所に活かされています。

秋の木漏れ日

庭に降る秋の光は植栽を通りぬけて木漏れ日を運んでくれます。涼風に音もなく揺れる木々が描く不思議な影絵は屋内深くまで届き、秋の深まりを告げています。

翳り早い秋の一日。なお低く差し込む光にあらゆるものが濃い陰影を生みます。明るい中では気付かない建具の木目、土壁の僅かな凹凸の豊かな表情は、触れて確かめてみたくなるような趣を湛えています。土もののうつわも、光線の加減で変化が生じる釉薬の発色がその魅力のひとつ。うつわそのものが仄かな温かさを帯びているかのようです。深まり行く秋。風に冬の気配が色濃く混じりはじめると、京の町は、本格的な冬支度を始めます。