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第12回 杉本節子さんに聞く「商家を支えた信仰」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、快適に過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第12回 商家を支えた信仰

かつて、人々の暮らしの中心には神仏への信仰がありました。時代の移り変わりとともにその多くは簡略化されてしまいましたが、祖先を敬い、家門の安泰を願う気持ちは変わることなく、しきたりや年中行事の根底にいまなお息づいています。初霜が降り、冬支度をひと通り済ませる頃に営まれる報恩講は、杉本家にとって極めて重要な行事とされていました。

格子の間

「ほんこさん」すなわち報恩講は、浄土真宗の開祖、親鸞の遺徳を偲ぶ法要で、在家門徒によってそれぞれの家で営まれます。かつて、西本願寺の直門徒として勘定役を務めるなど、厚く浄土真宗を信仰してきた杉本家では、報恩講は家を挙げての一大行事でした。親戚やお店のお手伝いさん、門徒衆らが参集し、大変な賑わいだったようです。勤行が終わると、お とき と呼ばれる精進料理が振舞われます。その献立は、かせ湯葉と小芋ときくらげの葛ひき、かんぴょうと新銀杏の味噌和え、生麩と椎茸の炊き合わせなど、10品ほどにもなります。

虫籠窓と出格子

報恩講の荘厳(装飾品の意)は特別に格調高いもので、仏間と内陣を隔てている襖を取り払い、大戸帳が掛けられます。大戸帳が掛けられるのは、特別な法要に限られており、打敷、下懸などとともに赤を基調とした裂で荘厳されます。華美な装飾がほとんどみられない町家のなかで、最も装飾性溢れる場が仏間であり、最も美しく飾られるのが報恩講でありました。

細格子ごしに屋内へ届く陽光は、朱塗のうつわの艶やかさ、飴色に潤む茶托の溜塗など、漆器の奥ゆかしい表情を引き出してくれました。師走の足音も聞こえ始めるこの季節、くつろぎのひと時にはお正月前のお手入れを兼ねて、漆器のうつわを選ばれてはいかがでしょう。

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