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- 1月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の年迎え」
- 2月 | 杉本節子さんに聞く「町屋を彩る花の風情」
- 3月 | 杉本節子さんに聞く「京町家のおひなさん」
- 4月 | 杉本節子さんに聞く「京町家 一服に憩う」
- 5月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の五月人形」
- 6月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の夏迎え」
- 7月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の屏風祭り」
- 8月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の夏の行事」
- 9月 | 杉本節子さんに聞く「京町家の秋の気配」
- 10月 | 杉本節子さんに聞く「秋の光降る京町家」
- 11月 | 杉本節子さんに聞く「商家を支えた信仰」
- 12月 | 杉本節子さんに聞く「京町家のおだいどこ」
明治3年の杉本家住宅棟上と同時期の作といわれる石づくりの兎。
やわらかな毛の質感と豊かな丸みに石の質感が生きる。
初秋を迎えてなお、残暑続く京の町。わずかな陽光のやわらぎに見上げると、空高く横切るすじ雲に夏が去ったことを感じます。祭礼の続いた季節が過ぎ、静けさを取り戻した京の町。少しずつ近づく秋の兆しを探しに杉本家を訪問しました。
前庭に咲き乱れる萩と、フジバカマに羽を休めるツマグロヒョウモン。
移ろう季節は、花々の便りによっても運ばれてきます。杉本家住宅には数多の草木が配され、季節ごとに庭々の表情を彩ります。僅かな気温の変化を感じ取り、開花してゆく秋草は愛らしくもはかなげ。か細い茎を野分に揺らす様子はこの季節ならではの風情です。
秋も色濃くなる9月下旬には、建具を元に戻す建具替えが行われます。夏の間、日を遮り風を導いた簀戸、簾といった夏建具は障子、襖へと替えられます。また秋の好天は障子紙の貼り替えには良い機会。巻紙になった美濃紙を寸法に合わせたり、糊の硬さを調整するなど充分な手間をかけることで、美しい張りのある障子へ仕上がってゆきます。美濃紙の障子を通る秋の光は、部屋の隅々を優しく照らします。
思いのほか足早に訪れる夕暮れも秋の兆しのひとつです。暮色がせまり、ひと際高まる虫の音が澄んだ空気を震わせます。うつわはそろそろざっくりとした質感が似合い始めるころ。名月を待つ宵のひとときに、織部の澄んだ緑色と土の味わい深い備前のうつわを選びました。静かに盃を重ねれば、まもなく東山の稜線が月光に白みはじめます。