第6回 杉本節子さんに聞く「京町家の五月人形」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、快適に過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第6回 京町家の五月人形

京を囲う山々の緑いよいよ濃く、爽やかな風が心地よい季節。
清浄な香りと初夏らしい瑞々しさを湛えた菖蒲も盛りを迎えます。菖蒲の節句ともよばれる端午の節句はここ京都でも大切な節句として迎えられます。幾年にも渡り、子の健やかな成長の願いが込められてきた杉本家の五月人形をご紹介します。

杉本家の床飾り

大和朝廷の発展を飛躍的にもたらした応神天皇と、忠臣として誉れ高い翁姿の武内宿禰。
洛中の商家であった杉本家では、端午の節句にも気品がある姿の人形が好まれました。
明治期の商家の床飾りの様子をよく伝えています。

応神天皇の五月人形

武を誇る鎧兜姿ではなく、烏帽子姿に鮮やかな狩衣、男雛のようにやさしく柔らかな表情の応神天皇。
狩衣の下からのぞく鎧が、尚武を願った五月人形であることを物語っています。

左:源義経
右:明治天皇

杉本家九代目婦人のご実家ゆかりの人形

鎧兜に身を固め表情も勇ましい源義経。江戸後期のものと言われています。口元をきりりと引き結んだ表情に険しさはなく、典雅で品のあるお顔立ちです。
珍しい洋装の明治天皇の人形は、老舗で知られる大木丸平人形店で誂えられた限定品。それぞれの時代や世相を反映する人形の特徴が見て取れます。
驚くほどの精緻さで作り込まれた刺繍や飾り房に、京の職人たちの優れた技巧が存分に生かされました。

端午の節句の味といえば、粽や柏餅。龍を退けたという中国の故事に因んだ粽、新芽が出るまで古い葉を残すことから子孫繁栄の象徴とされる柏、いずれも願いを込めて食される節句の一品です。
京都の柏餅は、白味噌に砂糖を加え、飴色になるまで練った白餡が好まれています。
様々な姿で美と技を今に伝えてくれる杉本家の五月人形。
いずれも武者人形でありながら、表情には静かな気品が漂います。そのまなざしには子の健やかな成長を願った親の想いがこもり、優しい光を帯びてさえいるようです。

端午の節句の器

端午の節句の味は優しい甘さの和菓子が主役。
発色を抑えた盛鉢にこんもり盛れば、青葉の色味が引き立つ初夏の節句らしいテーブルになります。